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「ガラスの天井を打ち破れ」
2024年11月1日
相川康子 NPO政策研究所専務理事(明石市在住)
伝えた方が良かったのか、伝えない方が良かったのかー。
先日、和歌山の県立高校の特別授業でジェンダーの問題を話す機会があった。大学で非常勤講師を務め、各地で防災研修等を行っているので、大学生や社会人の前で話すのは慣れているが、今回は純真な高校1年生が相手。時間枠も大学は1コマ90分だが、今回は半分の45分ということで、何をどう伝えるのか、かなり悩んだ。
私自身もそうだったが、高1では「ガラスの天井」という言葉を知らないか、聞いたことがあっても実感がない。今年度上期にNHKで放映されて話題になった『虎に翼』も観ていない生徒たちに、ジェンダーをどう伝えれば良いのか。私はその後、男女雇用機会均等法施行後の1期生として地方新聞社に入り、男社会の壁にぶつかって、寅ちゃん同様「はて?」という思いを散々してきたのだが、若者にとってそれは“昔話”で「いまは差別などない」と信じていることだろう。
まずは、前置きとして「今日は時間の制約から<男>と<女>に分けて話さざるを得ないが、本来、性は多様なもの」とLGBTQについて触れてみる。社会人だとここで首をひねったり顔をしかめたりする人もいるが、生徒一同「当たり前」という顔でうなずいてくれる。
次はデータの紹介。日本は、GDPは4位、PISA(国際学力調査)は3分野とも2~5位と世界のトップクラスであることを示した上で「では、男女間格差を示す<ジェンダー・ギャップ指数>の順位はどのくらいだと思う?」と問いかける。低いとは思っていたようだが「146カ国中118位」(2004年、世界経済フォーラム発表)という数字に目を丸くしたところで、議員や企業の管理職における女性比率、賃金格差の実態など次々データを示し、いまなお残る「ガラスの天井」についても、米大統領選でのヒラリー・クリントンらのスピーチを引き合いに出しながら解説する。
古い性別役割分業意識は年齢層が低いほど薄れるとはいえ、若者の間でもステレオタイプの「男らしさ」「女らしさ」にとらわれている人が意外と多い。「『男らしくない』とか『女のくせに生意気』を批判されるのがイヤで、無理していませんか? 誰かを『型』にはめて無理させていませんか?」。若い彼ら・彼女らに、そして改めて還暦近い自分にも問いかける。
知らず知らず刷り込まれてきたジェンダーバイアスを自覚するのは、辛い作業かもしれない。高1生に、厳しい現実を伝えることの葛藤もある。でも障壁があることを知っておいた方が、心構えができ、打ち破る力も培いやすいはず…頑張れ、未来の開拓者たち!
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